「公安の手は借りたくない。合同捜査になるならまだしも……」





一颯の羽交い締めから解放された汐里は肩を回しつつ、二階堂を睨む。
すると、汐里のスマートフォンに着信が入った。
――嫌な予感がする。
一颯は直感的にそう感じた。






「瀬戸、今のうちに逃げるか」





「え?でも、解析が――」






「――は?……舐めてんのか、捜一を?」






電話をしている汐里の声が怖いほどに低くなる。
電話の内容は彼の直感的に感じた嫌な予感が的中しているようだ。
一颯は早々に逃げれば良かったと後悔する。
電話を切った汐里をスマートフォンを壁にぶん投げた。





「え、スマホ!?」





瀬戸は汐里がぶん投げて壁に直撃して壊れたスマートフォンを拾い上げた。
画面が割れ、電源も入らない。
完全に壊れているようだ。
そんな瀬戸に「バックアップは取ってあるから大丈夫」と声をかけたのは解析チームの一人だった。






「京さん、癇癪でスマホ壊すの何度目ですか。で、一応聞きますけど、電話何だったんですか?」






汐里の癇癪に慣れつつあった瀬戸だったが、スマートフォンをぶん投げて壊すのは初めて見たので混乱していた。
だが、二年相棒をしている一颯は慣れたの事なので、冷静だった。
解析チームのメンバーも気にすることなく、各々仕事をしているので、慣れていることが伺える。





「……二階堂、お前知ってたな?うちと公安が合同捜査になるって」





「エ、ナンノコト?サテト、シゴトシヨウカナ」





汐里に睨まれた二階堂は棒読みでそう答えて、目の前のPCと向き合う。
そんな二階堂の態度に汐里は再びブチ切れ、今度は彼にヘッドロックを食らわせる。
それを一颯が再び羽交い締めで止めた。






「俺にキレるなよ!てか、お前、相変わらず短気だな!?少しは京警視を見習って澄ましてろ!」






「その済ました警視と兄妹喧嘩をして身につけたヘッドロックだ!私に文句言うな!」






「……浅川さん、何か京さんがいると、皆とりあえずブチ切れとけみたいになるの何でですか?」






「俺が聞きたいよ、それは。本当にいつもうちのブチ切れ怪獣が騒がしくてすみません……」





一颯は汐里を押さえつけながら解析チームのメンバーに頭を下げる。
しれっと先輩をディスる一颯に、瀬戸と解析チームのメンバーは苦笑いだ。
と同時に同じ事を考えていた。
すぐブチ切れる怪獣よりも、そのブチ切れ怪獣と二年間も相棒をやり続けている一颯が一番凄いのではないかと。