「だから試合に負けちゃうこともある。でもそれがルールだからどのチームも守る。初めは足手まといだった男の子も練習に参加するうちに少しずつ上手になってバットに球があたるようになる、ヒットにつながるようになる、そして勝つことにつながっていく」


そうだよな、とレギュラー勇樹が調子のいいことを言って、あちこちでクスクスと笑い声が上がった。
そんななか、モモネは眉をひっつめて立ち上がった。


「野球ってことは登場人物は男の子ばかりですか?」
「お話の中ではそうね。でも男女混合チームにしてシナリオをつくることはできるわ」


それならいい、とモモネは椅子に座った。みんなが、いいね、と声を出している。当番が決を採った。賛成に全員の手があがる。それじゃあ決まりね、と久美子先生が手をたたいてホームルームは終わった。


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帰りの会も終わって、下校になる。3年生以下の下級生たちは一列になって集団下校をするけど、ぼくたち4年生はそれぞれに下校していいことになっている。野球やサッカーをやっているクラスメートは練習に遅れないようにと、急いで教科書をランドセルに詰め込むと乱暴に背負って教室を駆け出していく。何も習い事をしてないぼくはゆっくりと立ち上がって廊下に出た。目の前にモモネたちの女子集団がいて、ぺちゃぺちゃとおしゃべりに興じながらだらだらと歩いていた。彼女たちは廊下いっぱいに広がっていたから追い抜くこともできなかった。別に用事があるわけじゃないし、と後ろをついていった。