司会は今日の当番だったけど、見かねた久美子先生が前に出て、やりたい劇をみんなで出し合い、投票して決めたらどうだろうと提案した。みんながそれに賛成し、先生は紙切れを回した。それにやりたい話を書いて、それを当番が席をまわって集めた。ぼくは12番目の天使というタイトルを書いた。先生は集まった紙をいちまいいちまい吟味しながら読み上げ、当番は集めた紙をもとに黒板に書いていく。舌切り雀、百万回生きた猫、妖怪ウォッチ、マッチ売りの少女……とおなじみのタイトルがならんだところでぼくの12番目の天使が上がった。12番目の天使ぃ?、知らなーい、とあちこちから声が上がる。久美子先生はポンポンと手ばたきしてみんなをいさめた。
「これはね、アメリカの野球少年たちのお話なの。野球をやりたい子どもたちを集めて4つのチームに割り振って試合をする。そこには試合には全員を出場させなければいけないというルールがある。どんな下手な子でも1試合に一度は出番がある、ということ」
それっていいじゃん、とサッカー万年補欠の隆太が喜んだ。
お前が出たら負けるだろ、と同じサッカーチームのレギュラーの勇樹は怒ったように言う。