志望校は授業料の安い国公立の文系に絞っていた。理系のほうが就職もいいのはわかっていたが、なにせ授業料が高い。合格して入学してからの費用を考えると文系がせいぜいだ。通帳には今まで貯めたお年玉の総額が記載されている。10万にも満たないそれでは入学金すら支払えない。私は下校後にコンビニでバイトを始めた。入学金は30万円だ。
時給が安く、とても目標の額に届きそうになかった。わずか3か月でコンビニをやめ、時給のいい運送業の倉庫の仕分けに切り替えた。各支所から集められた段ボールを配達方面別に仕分ける仕事だったが、重労働な上、ガラの悪い男性ばかりの職場で空気が悪かった。お嬢ちゃん手伝おうか、といやらしい笑い方で手を重ねてくる男もいた。帰宅するのが22時でそれから机に向かうが眠気が勝ち、成績はみるみる落ちていく。

放課後、担任教師に呼び出されて進学指導室にいくと廊下には4,5人の生徒が椅子に座って順番待ちをしていた。小テストで毎回一桁を連発しているメンバーだった。どの顔も間抜けで向上心がみじんもない。その椅子の列に座るのはそれに染まってしまいそうでいやだったが、致し方なく最後の椅子に腰かけた。進路指導室は職員室の奥に位置していたから通る生徒は少なかったが、物珍しげに列を見やりながら歩いている生徒は私たちを見世物と勘違いしているように思えた。宿題を忘れて廊下で立たされている小学生気分だった。

面談では、大学進学はあきらめて専門学校に切り替えたらどうだ、とまで進言された。

いけない。このままでは進学できない……。