ぼくがどもって返事をすると、うしろから、どもってやんの!、とヤジが聞こえた。その俊平くんの声にみんながクスクスと笑う。久美子先生は笑うでもなく、怒るでもなく、平坦な顔のまま、僕を見つめる。


「友則くん、じゃあ、教科書の35ページから読んでみて」
「は、はい。”このときおじいちゃんはリサに鍵を渡していたのです。その鍵には……」


ぼくは席を立って国語の教科書を読んだ。こういうときは不思議とぼくはつっかえたりしない。誰かと会話をするときだけ、どうしてもつっかえてしまう。予測のつかない会話はぼくは苦手だった。だからぼくはいつも一人を選んでいた。つっかえてどもって、みんなの会話のペースを乱したくない。ううん、乱して変な顔をされるのが怖かった。話が盛り上がっているときに、つっかえたり、思うように言葉が出てこなくて盛り上げてしまったとき、みんなが嫌そうな顔をするのが耐えられなかった。会話もこうして文章になっていたら楽なのに。

はいそこまで、という久美子先生の合図でばくは読むのをやめて椅子に座った。ちょうどチャイムが鳴り、


「じゃあみんな、そろそろ来月行われるお楽しみ会の準備をしましょう。題目を考えてきてくださいね」


と久美子先生が言って5時間目は終わった。当番が起立、礼、と号令をかける。

*-*-*