カールした髪がポンポンとはね、ふわふわと揺れて彼女そのものがまるでふんわり甘い綿菓子のようだった。両脇にはお洒落で若く、笑顔を浮かべている両親らしき若い男女。幸せを絵に描いたような家族だ。

空き地に出店していたスイーツスタンドに3人は吸い寄せられ、ドーナツを買い求める列に並んだ。うずまきドーナッツ……すぐ裏手を流れる巴波川(うずまがわ)になぞらえた屋号だろう。黒板ボードには1こ500えん、カラフルなロリポップドーナツ、とイラスト付きで書かれていた。

私にもあんな頃があった、と誇らしくもさみしく昔を思い出す。両方の手の先には親の大きな手があり、デパートに行けば水色の服をねだり、屋上遊園地でメリーゴーランドに乗せてもらった。

……でもわずかに覚えている幸せな記憶はそれだけだ。