モモネがぼくのとなりに来て、出来上がったドーナツを袋詰めしていく。あのときぼくより大きかったモモネの背はいまはぼくのほうが高い。あたまひとつ分は抜いている。そのモモネからはほんのり甘い香水が漂ってくる。モモネのつむじは左巻きだ。おてんばを象徴するショートカットの髪は長くなり、今はウェーブがかかっていて、女らしくなったモモネは店先でナンパされることもあるらしい。

ちょっとぼくは内心、心配だ。


「パパがこんどうちに連れて来いって」
「だ、だれを?」
「友則に決まってるでしょ。カレシがいるならちゃんと紹介しなさいって言われてたから」
「あ、うん。え……ええっ?」
「なにビビってるの。パパに会うだけでしょ。うちのモモネを泣かせたら承知しないとか、モモネを傷物にしたら許さないとか、言われてると思うけど」
「キズモノ……」
「もう傷物にされたけどね」


モモネとは中学を卒業してから付き合い始めた。キスはしてきたけど、キズモノにしたのは最近だ。性格は男勝りのモモネだけど、そういうときのモモネはしおらしくてカワイイ。思わず思い出してしまった。

「なに笑ってるの」


ひじ鉄をくらって、ぼくは作業に集中した。



(おわり)