朝練に参加するメインメンバーの空気もピリピリしていた。
「友則、もっと大きな声をだせよ!」
「ちょっとそこで噛まないでよ。もう」
ぼくがとちるたびに、みんなが一斉攻撃をしかける。そちこちから砲弾がとんできて、のろまなぼくはうまくかわすことはできない。
「ごめん……」
「ごめんじゃなくて。もういっかい。今度はおっきなこえでいってみて。叫ぶくらいに」
「あ、うん……」
「“ぼ、ぼくたちはぜったいに、負けないよ”」
「もっと大きな声で。おなかから声出すのよっ!」
「“ぼくたちはぜったいに負けないよ”」
モモネに怒鳴られながらぼくは声を出した。
「まあ、いいわ。つづき、ほら俊平でしょ」
「“なにが負けないだよ、お前のせいだろ」
「“足手まといなんだよ、お前は”」
「“つ、次はぜったい打つよ”」
……だいきくんはバットを手にするとバッターボックスに向かいました。相手チーム投手は、ふん、と鼻で笑いました。
どうせ空振りだろ。
負ける、負ける、負ける。
あはは。あはは。
派手な空振り。へたくそ。ちび。
足手まといなんだよ、消えろよ、だいき。
みんなの台詞がぼくを突き刺した。あまりにもぼくにあてはまる内容だ。そうか、みんな、最初からぼくにこの台詞をいいたくて、ぼくを主人公にしたんだ。ひどい、ひどい、ひどい。
「……だよ」
「友則?」
「ぼくには無理なんだっ!」
「友則くん?!」
ぼくは教室を飛び出した。全速力で廊下を駆け抜ける。階段を一段飛ばしで降り、昇降口に猛ダッシュした。靴に履き替えて、かかとを踏んだまま、校門から外に出た。