賛成、賛成!、と声が次々に上がる。また矛先が僕に向いた。


「このお話を書いてくれた人は誰かな?」


僕はうつむいたままじっとしていた。このまましらばっくれよう。絶対にやりたくない。


「おかしいわね。書いた人がいないはずはないのにね」
「先生。たぶん、それ、わかります」と先週当番だった子。


「あの紙をみれば誰が書いたかわかると思うんです。書き方っていうのかな」
「筆跡ね。じゃあちょっとみてみましょうか」


ぼくは顔を下に向けたまま、上目遣いに先生のほうを見た。久美子先生は机の中から紙の束を取り出した。まるで今日のホームルームがこうなることを予測していたかのように。そして一枚を取り出した。眉をひそめてじっと見つめる先生はしばらくしたあと、ぱっと笑顔になった。その筆跡が誰のものであるか判明したようだ。万事休すだ。


「友則くん、どうかしら。主人公やってみない?」


人の声でざわめいた。きっと皆が振り向いてぼくを見ているんだ。なんであいつが?って思ってる。


「これ、友則くんの字よね。友則くんが推薦してくれたのよね?」


ぼくは返事をしたくなくてじっと石になった。ずっとこうしていればきっとみんなはあきらめてくれる。