翌日。
一颯は頭痛を堪えながら署の資料室にいた。
昨晩は極薄のウイスキーで侑吾に潰され、結局京家に泊まった。
といえば聞こえは良いが、正しくは起きたら汐里と侑吾、一颯がリビングで雑魚寝していた。
あれだけ飲んだのに、頭痛で苦しんでいたのは一颯だけ。
汐里と侑吾はピンピンしていた。
「クソ……何で皆して俺に酒飲ませるんだよ……。俺は飲めないって言ってんのに……」
ぶつぶつと文句を言いつつ、目的の資料を探す。
一颯が探しているのは京太志が殉職した事件の資料だ。
汐里に直接聞けばいい話だが、内容が内容なだけに聞きづらい。
椎名達に聞くのも違う気がして、結局自分で探すことを選んだ。
「今から十年前だと……あった!」
十年前の資料が置かれた棚を見つければ、すぐに目的のものは見つかった。
持ち出すには許可が必要のため、その場で閲覧する。
京太志はとある連続殺人犯を追っていたが、逮捕を目前とした時に殺人犯と遭遇し、殺害された。
その時に共にいたのは今の捜査一課の課長、司馬だった。
「課長は京刑事の相棒……?」
「目的のものは見つかったかい?」
背後からかけられた声に、一颯はびくりと肩を揺らして振り向く。
そこにいたのは司馬で、まるでタイミングを見計らっていたかのように現れた。
穏和そうに見えて切れ者揃いの捜査一課の課長をしているだけあり、食えない人物だ。
「え、はい。司馬課長は京刑事の相棒だったんですか?」
「ああ。恐らく君が誘拐された時に《キョウさん》と呼んでいたのは私だ。あの時の子供が部下になるとは思っても見なかったよ」
「自分もです。あの、京刑事は何故犯人に殺されたのでしょうか?」
「キョウさんは奴を信じすぎたんだ。更生できると。だから殺された。奴は人を信じないし、自分本意の男だからな。だが、私は奴を許さない」
司馬は京太志が殺された現場に居合わせた。
目の前で相棒を殺され、その犯人はまだ捕まっていない。
捕まっていないどころか、手がかりすら見つかっていない。
何とももどかしい。