「焼き餃子に水餃子、揚げ餃子に春巻。生春巻に揚げワンタン。ワンタンスープ、シュウマイ……」
いつの間にか春巻まで追加で作られており、どこぞの惣菜売り場だと言いたくなるほどの量が並んでいた。
確かにパーティーだ。
だが、メインが餃子ではなくなっている。
一颯は隣でハイボールを飲みつつ、揚げワンタンを頬張る汐里を見た。
「京さん、いつもこうなんですか?」
「こう?ああ、餃子パーティーだが、餃子がメインじゃないな。二ヶ月前は餃子パーティーって名前の焼き肉になった」
「その前は餃子パーティーって言ってたのに、お好み焼きばっかり焼いてたな」
「京警視、それはもう餃子パーティーとは言いません。お好み焼きパーティーです」
一颯は京一家の自由さは東雲家にはない自由だからか、少し戸惑ってしまう。
彼自身、パーティーという名前のものには幼い頃からよく父に連れられて行ったことはある。
だが、それはこんなユーモアが溢れたものではなく、萎縮と緊張しかしないものだった。
東雲という名前が一颯を萎縮させ、緊張させていた。
「こういうの、嫌いですか?」
すると、遠慮がちに宙斗が一颯に問いかけてくる。
戸惑いはある。
だが、嫌いではない。
むしろ――。
「むしろ、飾らなくて好きです。緊張しないし、萎縮もしない。自由な感じで気が楽です」
一颯は本来ならば、汐里達とは住む世界が違う人間だ。
彼が警察官を志さなければ、こんな風に共に食事をすることも無かっただろう。
汐里は口角を上げると、嬉しそうに笑う一颯の口に焼きたての焼き餃子を放り込んだ。
猫舌の一颯は突然のことに驚くが、出すこともできずあわてふためく。
「あっっづ!ばっ!?なっあっづ!」
「今馬鹿って言おうとしたか?」
「言ってません!だから、熱々の焼き餃子を構えないでください!」
賑やかだった。
こんな風に賑やかに夕飯を食べたのはいつぶりだろうか?
いや、これまでにあっただろうか?
一颯は汐里が差し出す熱々の焼き餃子から逃げながらも心が暖かくなるのを感じていた。