目の前でホットプレートで香ばしく焼かれていく焼き餃子。
茹であげ冷して、モチモチに仕上がった水餃子。
油でカリカリに揚げられた揚げ餃子。
目の前には様々な調理をされた餃子がずらりと並んでいた。





「どうした、食べないのか?」






呆然とする一颯に声をかけてきたのはホットプレートで餃子を焼いている汐里だ。
彼女の手には焼き上がった餃子を並べた皿があり、もう片方の手にはフライ返しを持っていた。
いや、食べるけども、と一颯は思うが、その前に状況が読めない。
何故、自分は此処にいるのかと。






「あの、京さん」





「ん?ラー油か?それとも、酢か?」





「あ、じゃあ、ラー油で。――いや、じゃなくてですね!」






「じゃあ、何だ?」





「何で俺は京さんのご家族と一緒に餃子パーティーをしているのでしょうか?」







そう、一颯は京一家と餃子パーティーをしていた。
確か自分は仕事を終えて、夕飯は何にしようかと考えながら官舎に帰ろうとしていたはずだ。
だが、同じく帰宅前の汐里に「今日は暇か?」とだけ聞かれて、暇だと答えた結果がこれだ。






「今日は二ヶ月に一度の京家恒例餃子パーティーの日だからだ」






「それは分かりますが、何故俺を?」





「官舎に帰って一人虚しく夕飯を食べるのも味気ないだろう。どうせ、お前、彼女いないだろうし、たまには家庭の味に舌鼓を打て」






「どうせ、彼女いませんよ。何か前にもこんな話しませんでしたか?」







一颯は呆れてため息を吐くと隣に京家の末っ子、朝陽がやって来た。
手には今から包むであろう餃子の皮と具が入ったボウルがあった。





「一颯君、一緒に包もう!」





「俺、下手だけど良いの?」





「焼いて食べれば一緒だよ」






朝陽は人見知りしないのか、コンビニで会ったきりの一颯にもすぐなついた。
しかも、言っていることは姉である汐里が言いそうな言葉である。
実際、ホットプレートで焼き餃子を焼いている汐里も「食えれば良い」等と言っているのが聞こえた。