その後到着した消防により火は数時間後に消し止められた。
そして、最後に仙石夫妻を見た場所の辺りから二人の遺体が発見された。
身元の鑑定は待たずとも明確だった。
その遺体は仙石康史とその妻、信乃。
今回の殺人遺棄事件の容疑者とされる者達のもの。
火事は警察の家宅捜索中に起き、容疑者が意図的に放ったとされる。
警察官数名が火傷などを負ったが、命に別状はない。
容疑の証拠となる品は明確なものは押収出来ず、火の中の塵となってしまった。
しかし、証拠の一部は押収出来たこと、被害者が発見された車が容疑者の借りたレンタカーだったことから立件が可能に。
「被害者が当時の未成年殺人犯であること、容疑者がその未成年殺人犯の被害者の遺族だったことが全部マスコミにバレた」
「隠してた訳じゃないのに、警察には非難の嵐。まあ、非難を食らってるのは目の前で容疑者を死なせたのもある」
「いや、それは責めようがないですって」
そんな会話をこそこそとしているのは赤星と椎名だ。
そして、その目の前には頬にガーゼ、腕や手に包帯を巻いている一颯と汐里がいる。
二人は今、報告書と始末書に追われていた。
「浅川、そっちは終わりそうか?」
「はい。もうじき終わります」
「そうか」
二人の様子はいつもと変わらないように見える。
だが、汐里の目の下にはクマがあり、一颯の顔色もあまり良くはない。
それを見かねた椎名はため息を吐いて、一颯と汐里に声をかける。
「それが終わったら、飲みに行くぞ。奢ってやる」
「そんな気分じゃないんですけど」
「俺もです」
「だったら、いつまでも辛気くさい顔するな。過ぎたことを悔やんでも時は戻らない。引き摺るな、切り替えろ。周りに気を遣わせるな」
椎名の言葉は厳しいが、正論だった。
汐里が恩師の死を引きずっているせいか、捜査一課全体の空気が重い。
周りが気を遣っているのが見て分かった。
汐里はふぅと息を吐くと、椎名を見た。
「すみません。少し頭を冷やしてきます」
汐里は席を離れ、フロアから出ていく。
一颯の目の前では椎名が赤星に「椎名さん、言い方!」と睨まれていた。
珍しく赤星の方が気遣いを見せている。
いつもは煽るのに。