それから間もなく、仙石夫妻に逮捕状と家宅捜索の令状が出された。
容疑は神元祥誘拐及び殺人、死体遺棄。
逮捕には一颯と汐里、その他数人の捜査員と向かった。
「待っていたよ、汐里。さ、思う存分探すといい」
刑事としてやって来た汐里に、仙石は歓迎するかのように家に招き入れた。
証拠はないと自信があるのか、それとも証拠があるから捕まえてくれと言っているのか。
どちらにせよ、汐里にとっては酷なことだ。
「いつ、俺達が犯人だと?」
仙石は証拠は見つかっていないというのに、あまりにも呆気なく罪を認めた。
最後まで、証拠が見つかるまで信じようとしていた汐里を奈落の底に落とすような言葉だった。
一颯は怒りと悲しみで肩を震わせる汐里の傍にいることしか出来なかった。
「浅川と此処を訪れたとき、線香とは違う匂いがした。浅川は花粉症で嗅覚が分からないと言っていたから気付かなかったみたいだが、あれは血の匂い」
「線香では誤魔化せないか……」
「あと、信乃さんが奥から来たとき。いつもなら信乃さんが出てくるのに、今回は先生が出てきた。それに、今も警察が来ているのに出てこない、何故です?」
「信乃は後片付けをしてたんだ。あの時も、今も」
ふと、汐里の鼻を微かに灯油の匂いが突く。
よく見れば、仙石の足元は何かを歩きながら撒いたような跡があり、濡れていた。
全然気付かなかった。
鼻が効かない一颯はともかく、汐里を始め他の捜査員もこの匂いを感じなかった。
「この液体は灯油だけど、灯油の匂いがほとんどしないものだ。ペルソナがくれた」
「っペルソナ!」
一颯はこの事件にもペルソナが噛んでいたことに歯を食い縛る。
奴が仙石を唆したのだ。
崩壊する寸前の理性を突っついて壊す。
アドバイス等と言っているがそれは間違いなく、犯罪教唆の罪になる。
「またあいつが……」
「言っておくけど、俺はペルソナに促されたからあの悪魔を殺した訳じゃない。俺は、俺達は自らの意思で殺した」
「先生、何で神元を殺したんですか?憎かったからですか?そんなことをしたって、鞠乃ちゃんは戻ってこないんです」
「分かっているよ。だが、憎かった。あの悪魔に鞠乃と同じ苦しみを味合わせてやりたかった」
仙石は家宅捜索が行われている茶の間を抜け、仏壇の前に行く。
そして、あの頃から成長しないままの娘の遺影を手に取る。