「クッソ腹立つ。クッソ腹立つ。クッソ腹立つ」
署に戻る途中、椎名は怒りを抑えきれずやけ食いをするためにコンビニに寄ると言い出した。
赤星も一颯も反対することなく、それに従う。
かご一杯にコンビニスイーツを全種類投入する不機嫌がMAXなのか椎名は元ヤンというだけあって、人相が悪い。
「おら、お前らも奢ってやるから好きなの買え。3個までな」
「ヤンキー口調になってますよ、椎名さん」
呆れつつも赤星はシュークリームとワッフル、プリンをかごに入れる。
この人達、さっきクッキーとか食べてたよな?糖分取りすぎじゃないか?
そんな心配をするのは一颯で、彼も心配はしつつも自分も杏仁豆腐と大福、チーズケーキをかごに入れた。
「え、すっごいスイーツだらけ」
コンビニのスイーツコーナーに屯するスーツ姿の男三人に、呆れたような驚いたような声が聞こえた。
その声は聞き覚えがあり、声がした先には汐里と男三人、そして女の人がいた。
「京さん!そちらの方々は?」
「母と兄の侑吾、高校生の弟の宙斗、小学生の弟の竜希と朝陽だ」
京家は汐里を除いて皆男の五人兄弟なのは知っていた。
だが、目の前で見るのは初めてで、改めて男ばかりの兄弟なのだと実感する。
汐里は運動会の帰りなのかジャージ姿で、兄も下の弟達もジャージを着ている。
そういえば、保護者参加の競技があると言っていた。
「京警視、お久し振りです」
「ああ。そっちの彼が例の新人君だね」
椎名達が頭を下げると侑吾は一颯の姿を見つけ、目を細めて笑う。
顔立ちが汐里とよく似ていて、笑った姿はごく稀に見れる彼女の笑みによく似ていた。
一颯はハッとし、侑吾に敬礼する。
「お初にお目にかかります、浅川一颯です」
「俺は今仕事中じゃないし、そんなに堅くならなくて良い」
「そうだぞ、浅川。この男、私がしつこく電話して休みをずらせって言わなかったら今日の運動会来なかったんだからな」
「いや、順延になったって母さんから聞いてたから休み取ろうとは思っていたぞ。それなのに、お前の鬼電とくれば……」
汐里と侑吾はお互い睨み付け、母親である琴子に「みっともないから止めなさい!」と叱られている。
良い歳して叱られている兄姉を無視し、宙斗は竜希と朝陽を連れて、アイスのショーケースの所にいた。
この五人兄弟の中で一番のしっかり者は真ん中の次男の可能性が浮上する。