署に戻り、一颯は三人の容疑者の聴取の内容を教えてもらっていた。
父が容疑者になっていることには驚きだが、赤星と椎名の様子を見る限り、久寿が犯人である確率は低いように思える。




「まず、さっきの東雲大臣の聴取の結果は大臣はシロ。犯行時間、大臣は秘書と妻と共に娘の誕生日プレゼントを買っていた。大臣が訪れていた店にも確認は取れた」





「そういえば、妹と会ったとき両親から誕生日プレゼントで時計を貰ったと言ってました。……両親とプレゼント被らなくて良かったと思いましたから」






昨日の休み、一颯は誕生日プレゼントを渡すために未希と会っていた。
時計は成人のお祝いのときに買おうと思っていたから今回は小ぶりの花のモチーフがついているネックレスを贈った。
両親が時計を贈ってしまったから成人のお祝いは何を贈るべきか、今から二年あるが悩む。




「秘書の羽田部と国会議員の鷹匠はまだ疑いは晴れてない。羽田部は日常的なパワハラ、鷹匠は被害者の愛人。表では善人ぶってても中身は悪人。人は見かけによらないな」





赤星の言葉に、ドキリと肩が揺れる。
その言葉で死んだ幼なじみのことを思い出す。
ストーカー被害に遭っていると一颯に嘘をつき、一颯の気を惹こうとした。
幼なじみも見た目や言動はか弱い女だった。
だが、それは一颯の前だけ。
実際は――。






すると、誰かのスマートフォンが鳴った。
それは椎名のスマートフォンから鳴っており、彼は電話に出る。
少し話してメモを取るとすぐに電話を切り、椎名は赤星の方を見た。







「九条繭江が目を覚ましたらしい。赤星、○○区の大学病院に行くぞ」






「はい!」






一颯も立ち会いたいと思ったが、彼は事件の担当ではない。
行ったところで何の役にも立たないだろう。
だが、椎名は一颯の方を見た。





「勉強もかねて一緒に行くか?」






「え、良いんですか?」





「京も休みでいないし、浅川も父親が容疑者から外れたとはいえ、真相が気になるだろう?」





「あ、ありがとうございます!」






一颯は椎名達と共に九条が入院する○○区の大学病院へと向かった。
病室は個室で、所謂特別室という部屋だ。
一般病棟とは異なる場所にあり、一流ホテルのような設備が揃っている。
病室には目が覚めたばかりの九条とその秘書、羽田部がいた。





「九条さん、目覚めて間もなくで申し訳ありませんが、捜査にご協力を」





「いえ。構いません」





「ありがとうございます。まず、犯行時のことを教えていただけますか?」






椎名と赤星は九条と話をしているので、一颯は部屋の端の方にいた。
すると、羽田部が一颯の下にきて、椅子を差し出してくる。