翌日。
一颯は汐里愛用の栄養ドリンクを捜査の為に駐車したコンビニで買い、一気飲みしていた。
頭がズキズキと痛む。
吐き気は無いものの、完全に二日酔いだ。
チューハイ半分しか飲んでないというのに。
「頭痛ェ……。飲むんじゃなかった……」
痛む頭をハンドルに押し当て、ぐったりする一颯に汐里は呆れていた。
いつもの如く助手席にいる汐里は操作資料を見ていた視線をハンドルへ向け、指差した。
「酷いなら私が運転するぞ?」
「いえ、俺が運転します。吐くのは御免なので」
「どういう意味だ?」
汐里は世間一般的には車の運転は上手い部類だ。
ただ、緊急の連絡などが入ったときの運転の荒さは乗れたものではない。
一度だけその運転に乗ったことがある一颯だが、下車後トイレにダッシュするはめになった。
赤星や椎名もそれを経験しており、捜査一課では「決して京には有事以外運転させるな」が暗黙の了解だった。
「そのままの意味ですよ。あー、雨だし頭が痛いし放火の犯人は手掛かりないし、まじでブルー。これぞまさにレイニーブルー!ってね」
「……浅川、帰ってこい。お前はそういうキャラじゃない。二日酔いで壊れたか」
汐里は壊れかけている一颯にビンタし、外を見た。
外は冷たい雨が降りしきり、時折フロントガラスを叩き付けるような大粒の雨が降っている。
梅雨入り前だと言うのに、 大雨に警戒の情報がスマートフォンに入ってきていた。
「……私も雨が嫌いだ。雨はいつも不幸を運んでくる」
雨を見つめる汐里は悲しげだ。
彼女はたまにこんな風に悲しげな顔をする。
理由は分からない。
知りたいが、一颯は聞けずにいる。
「あ、そういえば、日南子が警告したらしい」
「日南子って誰ですか!?てか、何を警告したって何をですか!?う、頭に響く……」
「生活安全課にいる私の友人。警戒パトロール中にストーカーに出くわしたらしくてな。ちゃんと警戒したって」
「そうなんですね。日南子さんにお礼を言わないと……」
「まあ、まだ油断は出来ないがな……」
一颯は汐里の言葉に頷く。
そう、まだ油断できないのだ。
警告したことでストーカーがどう動くか読めない。
警戒を続けなければ、紗佳の身を更なる危険にさらすことになってしまう。