「ストーカー被害?」




生活安全課に紗佳を送り届け仕事に戻れば、赤星に抜けていた訳を聞かれ、一颯は簡単に説明する。
デスクに座った一颯の隣では彼が買ってきたハンバーガーを汐里が豪快にかぶり付き、その隣では椎名がポテトをつまみ食いしていた。





「はい。幼なじみなんですが、前にもストーカー被害に遭ったことがあるから早めに俺に相談してきたみたいです」






「早いに越したことはないもんなー。相談しないで何か被害に遭ってからじゃ手遅れだし」





現にストーカー被害を受けているのに警察に相談せず、殺害されてしまうという事件が過去に何件も起きている。
そう言った事件を失くすのは難しいかもしれないが、被害を最小限に抑えられることはできる。
そのためには警察に相談することが大切だ。






「帰りは俺と幼なじみの共通の友人を呼んで、送ってもらうつもりです。さすがに俺は抜けられないので」






一颯はちらりと横にいる汐里を見ると、彼女は睨んできた。
当然だ、と言っているようだった。
目は口ほどに物を言うとはまさにこのことだ。
すると、一颯のスマートフォンに着信が入り、周りに出ることを許可を取りながら電話に出る。





「もしもし。啓人か?下についたなら紗佳が出てくるの待っててくれ。で、紗佳を家まで送ってやってくれ」






「浅川、出るぞ。放火事件の現場に行く」





「悪い!仕事だ、切るぞ」





一颯は電話を切り、先に歩いて行った汐里の後を追いかける。
「不器用だな、京も」「素直になれば良いのにって思いますよね」等と椎名と赤星が呟く。
だが、一颯は彼女の後を追いかけて出て行った後だったため、聞こえていなかった。
階段を降り、一階のフロアに行けば椅子のところで一颯の見知った男と紗佳がいた。






「あ、一颯!」





「啓人。紗佳も話終わったのか?」





一颯は二人に駆け寄った。
紗佳は話が終わったらしく頷いて、その一颯と共に来た汐里の姿を見つけ、頭を下げる。





「あの人、さっきの電話の人?」





「そう。ごめん、仕事に出ないといけないから。紗佳、くれぐれも気を付けてな。啓人、ちゃんと紗佳を送り届けろよ」





一颯は二人にそう言い残し、パタパタと汐里と共に外に出ていった。
車に乗り込み、今追っている放火事件の現場へと向かう。
その車内で助手席の汐里は誰かと通話していた。