署内、取調室。
そこには汐里と一颯、自首してきた青年ともう一人警官がいた。
汐里と一颯と青年が机を挟んで向かい合うように座り、もう一人の警官は壁側の机に向かって座っている。




「名前を伺っても?」






桐島穂積(きりしま ほずみ)です」






「年齢は?学生に見えるけど」







「二十二歳です。×○大に通っていましたが、今は休学しています」






桐島穂積と名乗った青年は淡々と汐里の問いに答えていく。
年齢のわりに落ち着いているように見え、一颯は自分よりも年下とは思えなかった。
一颯の周りの大学生の友達はもっと騒がしいから余計にそう思うのかもしれない。






「高坂要殺害を仄めかしているようですが、本当ですか?」






「はい。俺が高坂の首を絞めて殺しました。これが凶器です。調べて貰えば、俺の指紋と高坂のDNAが出るかと思います」






桐島は持っていた鞄から厳重に袋に入れられた凶器と思われるタオルが出てきた。
殺害された高坂の首からはタオルの繊維が検出されており、見たところこのタオルの繊維で間違いなさそうだった。
「あと、これを」と桐島は追加で何かを取り出した。






「これは?」





「高坂が売っていたドラッグです。あのバーで酒と共に出されていたものではなく、売春の為に薬漬けにされた女の子に渡していたものです」






桐島が机に置いたのはPTP包装シートに入った紫と緑のカプセル。
カプセルの色はともかく、パッと見たところただの薬のように見える。
汐里はそれを手に取ると、桐島を見る。






「……これは何処で?」






「妹が持っていました」






「その妹さんは?場合よっては署に来てもらうことになる」






「妹は半年前に死にました。自殺です。……いえ、高坂に殺されたんです」






桐島の目に憎しみの色が浮かぶ。
一颯と汐里は顔を見合わせ、頷く。





「全て話貰えますか?」





汐里の言葉に、桐島は静かに頷いた――。