「し――いや、京刑事。そちらの情報もこちらにくれないか。こちらだけ渡すのはフェアじゃない」






氷室は何か言いかけるが、すぐに訂正する。
だが、汐里は何を言いかけたのか気付いたらしく、しかめっ面をしていた。
そして、しかめっ面のまま一颯の方を見て顎をくいっと動かす。





「浅川、会議室に移動だ。さっきの聞き込みの情報を二人に話す」





「は、はい!」






四人は会議室に移動後、一颯は手帳を出し、先ほど聞き込みしてきたことを口にする。
聞き込みは近所の人、友人やバイト先等に行った。
家族にも行いたかったが、息子の死に憔悴しきっていて聞こうにも聞けなかった。
だが、近所の人や友人やバイト先への聞き込みで十分だった。







「被害者はドラッグの売人を行っており、友人やバイト先の仲間に勧めていたようです」






「ドラッグの仕入れ先は恐らく《七つの大罪》だ。マトリよれば、そのドラッグは粗悪品で、色々なものを掛け合わせて安く製造できる。だが、依存性は強い」






一颯の説明に、氷室はそう付け加える。
もしかしたら、公安は既にこのことを知っていたのかもしれない。
そうでなければ、ドラッグがどんなものなのか等分からないはずだ。
汐里は「知ってるなら聞くなよ……」と忌々しそうに氷室を睨み付けている。






「そのドラッグは『グリースペルディア』と呼ばれている。無味無臭、液体固体どちらにも精製可能」





「見た目は?」





「固体はロリポップの形をしている場合が多い。液体は無色透明。だから――」







汐里がバンと会議室のテーブルを叩いて立ち上がった。
その目には怒りと共に動揺が走っているように見えた。





「浅川、被害者のバイト先はバーだったな」





「はい。××にある『green』というバーです」






「バーがどうかしたのか?」





氷室の問いに、汐里は唇を噛む。
そして――。






「そのバー、ドラッグの温床かもしれない……」





汐里は忌々しげに呟いた。