「聞き込みの結果ですが、香山と原田双方には被害者を殺害する動機があることが分かりました。浅川」
「はい。被害者は香山という婚約者がいる身でありながら浮いた話が絶えない人物で、原田は被害者の浮気相手の一人だったようです」
「え?浮気相手とその婚約者が一緒に同席して酒を飲んでたのか?」
「そうなりますね。香山は原田が被害者の浮気相手と黙認しており、香山と原田は友人同士だったとか」
「……女って分からん」
捜査員の視線が唯一女である汐里へ向けられる。
が、汐里は捜査一課の中ではオッサンのカウントなので女扱いはされない。
現に、「女って分からんな」と汐里は険しい顔をしている。
彼女自身もれっきとした女だというのに。
「でも、何故被害者を殺害した?浮気相手と黙認していて友人として仲良くしていたなら殺害する必要は無いだろ」
「そこなんですよ。香山と原田どちらかが被害者の浮気を咎め、殺害したならば殺害する動機になります。ですが、この事件の場合はそうではない」
「うーん。フグの内臓を盗まれたという店も無いし、誰が何処でそれを入手して誰が被害者を殺害したんだ……」
捜査員達は頭を捻る。
そんな彼らを余所に、一颯はふと思い立ったように口を開いた。
「恋人同士だったのは香山と原田……。二人の恋路に被害者が割り込み――うわっ!?」
独り言のように言ったつもりだったのに、汐里を始めとした捜査員の視線が一颯へ向けられる。
何言ってるんだ、こいつは。
そんな感じのことを目で言われているようだった。
「え、あの……」
「浅川、話を続けろ。お前の考えを言ってみろ」
今回の事件を指揮する刑事に促され、一颯は咳払いをして話を続けた。