『この二人、何処に運びますか?』






『んー、B地点にある廃倉庫で良いよ。あそこなら脱出不可能だからね』






何かを運び出す音と二人の男の声。
恐らく片方が神室志童だろう。
赤星と椎名は顔を見合わせ、氷室の姿を探した。
B地点という場所が何処なのか赤星達には分からないが、公安として神室を追っていたのなら分かるかもしれないと踏んだからだ。






「氷室!何処だ!?」





「何だ?」






二階を捜索していたのか、カウンターの奥にある階段から氷室が顔を出す。
赤星は彼に駆け寄り、盗聴機で録音した音声を再生した。
音声の内容に、氷室は「B地点の廃倉庫……」と呟いてハッとする。





「あそこは《七つの大罪》の複数ある拠点の一つだな……」






「そこに京と浅川がいる……」





喫茶店のことは他の捜査員に任せ、赤星と椎名はそこへ向かおうとした。
が、二階から「おい!誰か!」という叫び声がした。
捜一の捜査員か、公安の捜査員か分からないが、声には動揺が感じ取られた。






「何だ?」






氷室が二階に戻り、赤星と椎名もその後に続く。
二階は喫茶店の店主の自宅なのか、生活感があった。
声がしたのは一番奥の部屋。
奥の部屋の前には声を聞きつけ、既に何人かの捜査員が集まっていた。






「ちょっと通せ」






氷室がかき分けて進んだ後を赤星達が続き、部屋の中に入る。
室内は暗かった。
暗幕が張られ、ガムテープで光が入り込まないように止められていたが、所々から光が差し込んでいる。





部屋の奥を見やれば、何かを囲むように人だかりが出来ていた。
その中心には誰かがいて、ぐったりしているように見えた。
赤星と椎名は人だかりの隙間から見えた誰かの姿に息を飲む。






「え……」






「何故、あの人が……」





動揺が隠せない。
その中心にいた人物は此処にあってはならない人物のもの。
見たところ、その人物は随分前から手足を縛られて監禁されていたようで、ぐったりとしている。
だが、その人物はつい先ほどまで署にいたはずだ。







「一体、何がどうなっているんだ……」






椎名はその人物に駆け寄る赤星を他所に、呆然と立ち尽くしていた。