玄関を開けると、廊下の先にあるリビングの電気が点いているのが見えた。
陽茉莉は足音が立たないように気をつけながら、そちらに向かう。今の時間、悠翔はもう寝ているはずだ。
リビングを覗くと、相澤はソファーに座ってテレビを見ていた。目の前のローテーブルには五〇〇ミリリットルの缶ビールが置かれている。
「ただいま戻りました」
相澤の後ろ姿に声をかけると、陽茉莉はそのまま自分が使っている部屋へと向かった。さっさと着替えて風呂に入ったほうがいいかと思ったのだ。
部屋のドアを開けようとしたとき、背後からトンっとドアに手を付かれる。驚いた陽茉莉は背後を振り返った。
「係長? どうかしたんですか?」
いつの間に後ろに来たのだろうと陽茉莉は驚いた。相澤は少し不機嫌そうにこちらを見下ろしている。