「フレンチトースト? 俺の分も作ってくれたの?」
「はい。もちろん」
「ありがとう。美味しそうだね」

 相澤は片手を首の後ろに当て、嬉しそうにはにかむ。その様子を見て、嫌いではなさそうだと陽茉莉はほっと胸をなで下ろした。

「朝ご飯を作ってもらうのなんて、いつ以来だろう。おふくろがいなくなってから、自分で作るものだったから」

 キッチンに入ってきてコーヒーメーカーをセットした相澤が小さな声でそういうのが聞こえた。
 それは特に陽茉莉に話しかけている風ではなく、自分の中で確認するように呟いた言葉に聞こえた。

(そういえば、係長のご両親ってどうしているんだろ?)