ラフなカットソーとチノパン姿の相澤は、キッチンを覗き込む。陽茉莉はその姿を見て、少しドキリとした。
 いつもきっちり髪の毛を整えてびしっとスーツを着込んでいるので、なんだが新鮮だ。多分これは、家着だろう。

(こうやって見ると、悠翔君に似てるなぁ)

 整髪料をつけずに無造作に下りた髪のせいか、普段より少し幼く見える。

(楠木さーん、オフでぐでっとしているときはこんな感じみたいです!)

 陽茉莉は心の中で、会社で隣の席に座る噂好きな楠木さんに報告をする。みんなが知りたがっている姿を見られるなんて、なんとなく得した気分。

「フレンチトーストを作ったんです。好きですか?」

 陽茉莉は相澤に見せるように、お皿を持ち上げる。