相澤はソファーにドサリと座ると、気だるげに髪の毛を掻き上げる。随分疲れていそうに見える。

「すぐ作りますね」

 陽茉莉は素早くエプロンをしてキッチンのカウンター越しに話しかける。相澤は上半身を捻ってこちらを見ると、口元に笑みを浮かべた。

「それ、いいな」
「ああ、唐揚げ。悠翔君から好きって聞きました」

 陽茉莉が笑顔で頷いたタイミングで、ピピッとコンロの温度設定完了の電子音が鳴る。菜箸で鶏肉を入れると、じゅわっと泡が上がった。

「よし、できた! 係長、できまし──」

 手早く調理を終えて相澤に呼びかけた陽茉莉は、口を噤む。先ほどまでソファーにもたれかかっていた相澤がいなかったのだ。