相澤との関係がばれたわけではないとわかり、ひとまずはほっとする。

「最近、また自炊を始めたんです。今日も作りたいなって思って」
「なるほど。昔、料理が好きって言っていたもんね」

 楠木さんは特に疑うこともなく、にこりと笑う。

「そうなんです。と言うことで、今日もお先に失礼します!」

 陽茉莉は明るい声で挨拶をすると、職場を後にした。

 
    ◇ ◇ ◇


 帰り際、相澤のマンションの最寄り駅で電車を降りた陽茉莉は、駅前にあるスーパーに立ち寄った。精肉コーナーでは、鶏のもも肉が特価になっている。