居候する立場の陽茉莉はともかく、相澤は自分の家に赤の他人が出入りすることになるのだ。少なからずストレスを感じるだろう。
 それに、彼女などがいる場合は誤解される原因になる。

「俺は大丈夫だ。むしろ、新山が家にいて悠翔の相手を引き受けてくれたら助かる。俺は邪鬼の退治で定期的に夜留守にすることがあるから──」
「そうなんですか?」

 陽茉莉が相澤を見返すと、相澤はこくりと頷いた。

(なんか、係長のことちょっと誤解していたかも……)

 悠翔の相手を引き受けてくれたら助かるというのは、きっと本音だろう。けれど、自分が助かるということ以上に陽茉莉が気を遣わないように言ってくれている気がした。

 会社でのふとしたときに目にする印象が強くて散々『猫かぶり』と影で呼んでいたけれど、実は仕事に真面目なだけで根はいい人なのかもしれない。