会社内では襲われないという事実には、陽茉莉も経験上気付いていた。だからこそ、最近は夜遅くまで会社に居残っていたのだ。
 相澤と一緒にいるときに襲われたことがないことも事実だ。

「でも──」

 陽茉莉はすぐに返事することができず、口ごもる。
 そもそも、恋人でもない未婚の男女が同居するということに抵抗があった。

「さっきも言ったが、このままだと恐らく新山はまた襲われる。襲われやすい体質、と言ったほうがいいのかな」

 それを聞いて、陽茉莉はサーッと顔から血の気が引くのを感じた。

 ──またあれに襲われる。

 考えただけでも体が震えてくる。