「ああ、悠翔。ごめんな。起こしちゃったな」

 相澤が立ち上がり、優しくその子供の頭を撫でる。
 陽茉莉は目をまん丸にしたまま、その様子を見つめた。

「新山、どうしたんだ? そんな顔して」

 陽茉莉の様子がおかしいことに気が付いた相澤が、怪訝な顔で首を傾げる。

「か、係長……こんな大きなお子さんがいたんですか!?」

 思わず、大きな声を出してしまった。

 これは社内に激震が走る大事件である。
 女子社員憧れの相澤係長に、実は隠し子がいるなんて!

 一方の相澤はぽかんととした表情を浮かべたが、すぐに陽茉莉の言葉の意味を理解したようだ。

「いるわけないだろう! 弟だ!」

 相澤の否定する大きな声が、部屋の中に響いた。