「まずは陽茉莉のその俺に対する感謝してもしきれない気持ち、どうやって返してもらおうか?」 耳元で囁かれ、鼓膜が甘く揺れる。吐息が肌に当たりぞくぞくとした感覚が込み上げてきた。 「そ、それは……」 想定していなかった事態に、陽茉莉は真っ赤になって狼狽えた。 「れ、礼也さんが大好きな唐揚げをたくさん作ります!」 何を言っているんだ、私は。 カーテン越しに見える夜空に、ぽっかりと浮かぶ丸いものが見える。 (あ。今日ってもしかして、満月?) そう気が付いたときには、とき既に遅し。