それに何よりも、これだけ一緒に過ごしながら相澤は一度たりとも陽茉莉に手を出そうとしないし、そんな雰囲気になったこともない。それは相澤が陽茉莉を女として見ていない証拠のようにも思えた。
だからあの日、悟ったのだ。
相澤にとって、陽茉莉を守っているのはきっと恩返しの気持ちが強いのだろうと。
「引っ越す?」
相澤の声が一段低いものに変わる。
「なんで?」
「悠翔君から聞いたんです。お父さんが帰ってくるって。それなら、私はお邪魔でしょうし。それに、最低限の祓除札は使えるようになったので──」
「だめだ」
「え?」