「そうだ。私、礼也さんにお伝えしないといけないことがあって」

 陽茉莉は妙な緊張感を覚えてソファーの端に姿勢を正して座り直す。心臓の音を隠すように、努めて明るく話を変えた。

「伝えたいこと? 俺に?」

 相澤は首を傾げたが、話を聞こうと思ったようで、陽茉莉の横に腰を下ろした。

「はい。実は、そろそろ居候もご迷惑かと思ったので、引っ越そうかと──」



 悠翔から『そろそろお父さんが帰ってくる』と聞いたのは、二週間ほど前。そのときから、ずっと考えていた。