「……きちんとしないといけないって、わかってる」
「礼也と気まずくなった後に新山ちゃんの保護が必要になったら、俺が引き受けてやるから安心しろ。俺も新山ちゃんの愛妻ご飯食べたいからな」

 高塔は相澤に発破をかけるように、軽口を叩く。
 その瞬間、相澤の目付きが剣呑なものへと変わり、部屋の気温がぐっと下がった。

「心配無用だ。陽茉莉は俺が守る」

 低い声には、邪鬼と対峙するときのようなすごみがあった。完全に男として敵視されている。

「決めるのは、新山ちゃんだろ?」

 澄ました表情で片眉を上げてみせると、ガタッと相澤が立ち上がった。高塔はその後ろ姿を見送り、苦笑する。

(相変わらず、新山ちゃんのことになると余裕がなくなるよね)

 高塔からすると、相澤は赤ん坊の頃から成長を見守ってきた弟のような存在だ。すっかりと大人の男になったと思っていたが、こうしてときに余裕をなくすところを見るとついついからかいたくなる。