「いやー、それにしても、新山ちゃんが祓除師になるなんてねえ。しかもまだ始めたばかりなのにあの癒札の効き具合、かなり才能ある気がする」

──それこそ、琴子さんを超えるかもね。

 グラスを置いた高塔は感慨深げに呟きながら、湯葉入りだし巻き卵に箸を伸ばす。この店の看板メニューのひとつだ。

「俺、実は礼也が新山ちゃんのことを無理矢理家に連れ込んでるんじゃないかとちょっと心配してたんだよね。でも、今回の件で平気そうだなって思った」
「…………。無理矢理に連れ込んだりなんか、しない」
「そうなんだけどさ、新山ちゃんにとっては礼也って上司だろ? 提案されたら断りづらいのは事実だろ?」

 高塔の指摘に、相澤は黙り込んだ。そんな相澤を見つめ、高塔はふっと口元を緩める。

「新山ちゃんが祓除師の修行をしたいって言い出したときに、この子は礼也のことが本当に心配なんだろうなって感じた。で、この前は危険を侵してまで礼也の元に駆けつけたのを見て、確信した」