「あの、強力な邪気が現れた日だよ。新山ちゃんが駆けつけた。一番いい見せ場を礼也にあげて、自分は裏方で後処理に回るって、完璧じゃない? 昔から、お姫様のピンチに現れるのはヒーローだって決まってる」

 器用にウインクした高塔を、相澤が胡乱げに見つめた。

「ただ単に別の邪鬼の始末に追われてて、出遅れただけだろ?」
「いや? 心配した新山ちゃんが電話をかけてくるところから、全て計算通りだけど?」

 すまし顔でそう宣う高塔に、相澤は内心で「うそをつけ」と言う。

 ──けれど。

 あの日、陽茉莉を来させるという判断を高塔が下したおかげで相澤が助かったのは確かだった。

 陽茉莉の癒札がなければ、回復まで数時間かかった。その間に善良な市民が襲われる危険や、邪鬼自体がどこかに逃げてしまい見失う可能性があったのだ。
 現にあのとき、相澤と高塔は二匹の邪鬼がどこにいるのか見失いかけていた。