陽茉莉は咄嗟にその手を振り払い。後ろに後ずさった。
 踵を返して走って逃げようとすると、右の足首を何かにぐっと掴まれるようか感覚がして陽茉莉は前に倒れる。

(何?)

 振り返って、見るのではなかったと後悔した。
 青白い手が、自分の足首を掴んでいる。体はなく、手しかなかったのだ。

 慌てて祓除札をショルダーバッグから取り出し、その手に投げつける。命中したそれはパチンと弾け、足首を掴まれている感覚が消えた。

「随分と物騒なものを持っていますね」

 男性が悠然した様子で微笑み、こちらに近付いてくる。