(人が少ないから、余計に怖いんだよね) 辺りを見回すと、一匹の犬が相澤達が消えた方向の様子を窺っているのが見えた。 銀色の体が、街頭で少しオレンジがかって見える。 (あ。あれ、悠翔君かな?) 「悠翔──」 陽茉莉が呼びかけようとしたそのとき、背後から「すみません」と声をかけられた。 陽茉莉は振り返る。 いつの間にか、そこには三十代前後の男性が立っていた。 「はい、何か?」 陽茉莉はその男性を見上げて首を傾げる。さっきまではいなかったのに、いつの間にこの人はこんな近くに現れたのだろう?