「ちょっと見てくる。陽茉莉、危ないからここにいて」
「うん。わかった」

 陽茉莉は走り去ってゆく相澤の後ろ姿を見つめ、両手で自分の体を包むように抱きしめた。

(相澤係長、いつもこんなことしてるんだ……)

 先ほどの消えていった邪鬼達の悲痛な叫び声がまだ耳の奥に残っている。
それがこの世界に住むあやかし達の使命とはいえ、感じる恐怖心は同じだろう。

(それにしても、気味が悪いくらい人が通らないな……)

 ここは都心のど真ん中なのにもかかわらず、先ほどから全く通行人を見かけない。周りにお寺が多いことと、既に夜の九時を過ぎていることを考慮しても、奇妙なほどだった。