高塔が叫ぶ声が聞こえるのと同時に、何かがその女に向かって投げつけられるのが見えた。けれど、女はそれをあざ笑うかのようにひらりと避ける。

「フフフ。ザンネンデシタ」

 キャキャッと声を上げてその女が笑う。そして、狙いを定めるように陽茉莉をねっとりと見つめた。

(怖い……)

 陽茉莉はぎゅっとショルダーバッグを握りしめ、震える手で中の祓除札に手を伸ばす。
 そのときだ。ザッと音がして、女の表情が変わった。ギギギッとぎこちない様子で、女が背後を振り返った。

「残念なのはお前だ。消えろ」

 氷のように冷たい口調で、相澤が言う。
 女の目が、零れ落ちそうな程に見開かれる。