「イイノガイル。モラッチャオウ」

 ヒヒッという笑い声と共に、すぐ近くから聞こえる声。

(この声って……)

 さび付いた蝶番のようにぎこちなく首を回すと、ガリガリに痩せた小人のような男がいた。目がぎょろりと浮き出ており、側頭部には角のような不自然な膨らみ。こちらをまっすぐに見つめて爛々と目を光らせている。

(これ、人間じゃない!)

 すぐにそう気付いた陽茉莉は、走り出す。

(そうだ、お守り!)