「やりましたか?」
「いや、今のは陽茉莉の気配に引き付けられて寄ってきた雑魚だ。捜している邪気ではない」

 相澤はすぐに首を横に振る。

(違うのか……)

 陽茉莉はがっかりすると共に、空恐ろしさを感じた。さっきから、無数の視線を感じるのだ。陽茉莉のことを見つめ、近付くかどうかを思案しているような、そんな視線だった。

(今まで、ここまで視線を感じることなんてなかったのに……)

 体は欲しい。けれどどことなくあやかしの気配を感じる陽茉莉に近付いて平気なものだろうか? 
 そんな警戒しているような視線だ。