相澤は答えなかった。その沈黙が肯定を表していると、陽茉莉は捕らえた。

「大丈夫です。祓除札も持ってきたので、すぐには呑まれません。癒札もちゃんと効いたでしょう?」

 鞄には、祓除札が五枚入っている。もしも襲われても、時間を稼ぐくらいはできるはずだ。

「それに、礼也さんは私が襲われたら絶対に助けてくれるでしょう?」

 陽茉莉はにこりと笑って、相澤を見上げる。
 以前、邪気に襲われて怯える陽茉莉のために部屋でオオカミ姿になって一緒に寝てくれた相澤は、陽茉莉にそう約束した。だから、陽茉莉は絶対に相澤が助けてくれると全面的に信頼している。

相澤は驚いたように目を見開き、絶句していた。

 くくっと横でふたりのやり取りを聞いていた高塔が笑い出す。