オオカミ姿になった相澤を何度か見たことがあるが、とても犬と誤魔化せるような体格ではなかった。あの姿で誰かに見つかったら、それこそ大変なことになる。
『何か目印になるものはありますか?』
『ちょっと待って──』
高塔はそこから見える、一件の店舗名を告げる。陽茉莉はそれをメモ帳にメモした。
『すぐに向かいます』
電話を切ると、陽茉莉はすぐに出かける準備をしようとした。そのとき、じっとこちらを見上げる悠翔と目が合う。
「お姉ちゃん、僕も行きたい」
陽茉莉は戸惑った。
悠翔はまだ小学二年生。いくら相澤と同じあやかしと人間のハーフとはいえ、相澤と同じようには邪鬼退治をできないだろう。それに、相澤と同じく、純粋なあやかしよりは妖力が弱いはずだ。