電話の向こうで沈黙が続き、陽茉莉は後者、もしくは両方であると悟った。

(妖力不足って、外でオオカミにならないとだめなレベルに疲弊しているってこと?)

 陽茉莉の知る相澤は、いつも颯爽と現れて簡単に邪鬼を追い払う。けれど、もしも逆にやられたら? そうしたら相澤はどうなってしまうのだろうか?

 相澤はあやかしだけれど、半分は神力を持った人間だ。

(琴子さんみたいに、呑まれて死んじゃうの……?)

 予想外のことに、スマホを握りしめる手が震える。

『今、どちらにいらっしゃるんですか?』
『正直、今、新山ちゃんに来られても守りきれる自信がない。すぐ近くに強力な邪鬼がいるってわかっているのに、万が一にもきみが襲われたらそれこそ一大事だ』