(どうしよう……。あっ、そうだ!)

 陽茉莉は発信中の電話を切ると、今度は〝高塔副課長〟を捜す。電話をかけると、高塔はすぐに電話に出た。

『もしもし』
『もしもし、新山です。高塔副課長、今、相澤係長と一緒だったりしませんか? 仕事に行くって言ったまま帰ってこなくって──』

 少しの沈黙があった。陽茉莉は高塔が相澤の居場所を知っていると感じ取り、早口に言葉を重ねた。

『悠翔君が、すごく心配しているんです。もう邪鬼退治が終わっているなら、早く帰って来てほしいって伝えてもらえませんか?』
『…………。礼也はここにいる。ただ、今回は相手が厄介で、今日は帰れそうにない』
『帰れそうにないって、一晩中追いかけるってことですか? 逃げているのを捜しているから帰れない?』
『…………』
『それとも、係長が妖力不足にでもなって、弱っているから帰れない?』