「お兄ちゃん、連絡ないの?」
何度も時計を見上げる陽茉莉の様子を見て、悠翔が不安げな顔をした。
陽茉莉はその表情を見てハッとする。
悠翔は、こんなに幼いのに邪鬼に呑まれて母親を亡くしている。相澤にまで何かあったのかと、不安になったのだろうということはすぐに予想がついた。
「大丈夫。お姉ちゃん、お兄ちゃんに『早く帰って来て』って連絡するね」
陽茉莉は体を低くして悠翔と目線を合わせると、安心させるようにそう言った。
スマホを取り出して〝相澤係長〟の表示を探す。すぐに見つけて電話をかけたが、相澤はなかなか出なかった。何度かかけ直したが、結果は同じだ。
「お兄ちゃん、出ないの?」
悠翔は相澤が電話に出ないことを察したようで、泣きそうな顔をした。