その三十分後、陽茉莉は城南地区の閑静な住宅街を歩いていた。
 周囲には大きな一戸建てや、低層の高級マンションが広がっている。

「この辺のはずなんだけどなぁ」

 スマホで地図アプリを確認しながら、周囲を見渡す。かなり近くにいるはずなのだが、どのマンションなのかがわからない。

 先ほどから何度か相澤の携帯電話に連絡したが、取り込み中なのか電話に出ることはなかった。四度目のかけ直しで、ようやく相澤が電話に出る。

「もしもし」
「もしもし、新山です。実は今日の日中に係長にお渡しした資料なんですけど──」

 陽茉莉は一通りの事情を説明し、かなり近くまで来ているのだけれど肝心のマンションが探せないことを伝えた。