「輪ゴムどこだろ?」

 ぱっと見た限り、輪ゴムは入っていなかった。陽茉莉は引き出しの中に、文具に交じって漆塗りの木箱が入っているのに目を留めた。黒い漆塗りに、椿の花の蝶貝細工が施された雅びな小物入れだ。

「もしかして、この中かな?」

 陽茉莉はその木箱の蓋を開ける。
 中を確認し、しまわれていたあるものに目が釘付けになった。

「え?」
「お姉ちゃん、どうしたの?」

 悠翔が不思議そうな顔をして、こちらに近付いてきた。そして、陽茉莉の見つめるものを横から覗き込む。