ゆったりとしたときが流れる。
 陽茉莉はちらりと相澤を窺い見る。パチッと目が合い、妙な気恥ずかしさを感じて咄嗟に目を逸らしてしまった。そして目に入ったのは、煌めく東京の夜景だ。

(綺麗……。相澤係長、誰かとこんなところに来たりするのかな?)

 今現在、相澤に恋人がいないことはわかっている。でも、これだけ見た目もよく仕事もできる男性であれば、次々と魅力的な女性が言い寄ってくるだろう。
 そう思ったら、胸の奥がチクンと痛むのを感じた。


 ◇ ◇ ◇


 この日、第一営業部は浮き立っていた。なにせ、滅多にない大型案件の契約が取れたのだ。